スマートシティの住民体験

住民の入居から滞在、退去まで、街に継続的に関わる仕組みをデザイン

Experience Design
Time frame: 16 weeks
Client: Major Manufacturer
Role: UX Designer
Skills: Research, Journey Map, Concept Plan, UX Design
(都合により概要のみ掲載しています)

Summary

大手メーカーによるスマートシティ開発プロジェクトにて、住民体験全体のデザインに携わりました。住民の募集から入居、街での生活、実証実験への参加、そして退去後も街と継続的に関わる仕組みまで、街全体のエコサイクルを見据えた体験価値の設計を行いました。実装や検証前の上流工程に特化したプロジェクトで、主にユーザー視点での体験設計・コンセプト整理・施策提案を行いました。作成したカスタマージャーニーや施策案は、クライアント社内の複数部門の連携・方針検討のベース資料として活用されました。住民と街が長期的な関係性を築き、コミュニティ形成と技術開発のイノベーションが両立する街のコンセプトを設計した点が特徴です。

Challenge

スマートシティの開所に向け、クライアント内の各部署はそれぞれ独立して街の運営計画を進めていました。そのため、運営目線ではなく住民目線で、ユーザー体験をシームレスに統一する必要がありました。具体的には、カスタマージャーニーやタッチポイントを整理し、住民に一貫性のある体験を提供することが求められました。さらに、街内で実施される様々な実証実験に対し、住民が自然に参加し、積極的に関与できる仕組みを構築する必要もありました。

Solution

住民の募集から退去後の継続的な関わりまで、一連の住民フローを確認し、全体のカスタマージャーニーを整理しました。各フェーズでの具体的なタッチポイントを定義し、住民が実証実験に自然と参加しやすくなる仕組みを検討しました。街に関する情報発信、住民向けミートアップ、退去後のネットワークづくりなど、フェーズごとの施策を提案し、住民が街に馴染み、主体的に関与できる体験を構築しました。住民と街、実証実験を行う開発企業との関係性を段階的に深め、退去後も継続的に街に関わるエコサイクルの設計を行いました。

Process

01. プロジェクト理解と課題整理

スマートシティにおける住民体験に関する既存の情報を整理し、プロジェクトの背景や課題を把握しました。特に、住民の実証実験への参加体験全体を俯瞰し、どのフェーズでどのような体験価値が提供されるべきかを検討しました。

02. ゴール設定

クライアントとのディスカッションを通じて、住民起点での体験ゴールを設定しました。「Before(入居前)」「During(居住中)」「Graduation(退去)」「Alumni(退去後)」の4つのフェーズに分け、それぞれのフェーズでの住民のニーズと期待を整理しました。

03. スマートシティの枠組み整理とユーザーフローの作成

街運営に携わる関係者のつながりを整理しました。入居住民、実証実験への参加企業、街の運営会社など、各ステークホルダーとの関係性や、住民の継続的な関わりの重要性を再確認しました。
また、住民の体験を可視化するため、プロジェクトのベースとなる概要レベルのユーザーフローを作成しました。これにより、各フェーズで発生する課題や、住民がどのように街と関わるのかを把握しやすくしました。

04. 詳細ジャーニーマップ作成

住民の入居前から滞在、実証実験への参加、退去後までの詳細な行動を整理し、ジャーニーマップを作成しました。このプロセスを通じて、住民の実証実験への参加を自然に後押しするために、どのタイミングでどのような情報やサポートが必要になるかを検討しました。

05. アルムナイジャーニーとリサーチ

退去後の住民(アルムナイ)が街とどのように関わり続けることができるかを検討するため、既存のアルムナイコミュニティのリサーチを実施しました。過去の住民が街と関わり続けることで、新たな価値を生み出す可能性を探りました。

06. コンセプト設計

ジャーニーマップをもとに、住民と街との継続的な関係が形成される体験価値を定義しました。住民達が単なる居住者ではなく、街の活動の一員として主体的に関わり続けることを促す仕組みです。

07. 施策案の検討

各フェーズにおいて住民の体験価値を最大化するための施策アイデアを検討しました。コンセプトに基づいて、街と住民の関係性を強化し、実証実験への参加を自然に促す仕組みとして、以下のような施策提案を行いました。

入居前オリエンテーション
住民の期待を高め、不安を解消するための事前説明会を開催。スマートシティの仕組みや住民同士の関係性構築をサポート。

コミュニティイベント
実証実験前後のミートアップイベントを通じて、住民同士や運営側との交流を促進。コミュニティの継続的な活性化を図る。

情報発信
定期的にコミュニティ活動や実証実験の情報を共有し、信頼を構築するためのニュースレターを配信。住民の興味や属性に応じて最適な情報が届く仕組みを構築。

参加記録システム
住民の参加履歴やステータスを記録・管理できるオンラインプラットフォームを導入。参加履歴をもとに、個々の住民に最適なイベントや実証実験の情報を提供。

退去後のネットワーク構築
退去後も街のニュースやイベント、実証実験に引き続きアクセスできるオンラインプログラムを提供。アルムナイとしてのネットワークを強化し、街との関係性を維持。

まとめ

プロジェクト初期にクライアントへのヒアリングを実施し、街の構想や住民に求める行動を整理。住民体験をフェーズ別にジャーニーに書き出し、実証実験との自然な関わりや体験を設計しました。住民が退去後も街と関わり続ける仕組みや、住民・開発者・運営者の三者が共創できる体験施策が特徴です。上流工程に特化した案件でしたが、住民視点に基づいた一貫した体験設計が、クライアントの、プロジェクト内外での方針共有や部門間連携の促進にも貢献しました。

Key Outcomes

・街を起点とした持続的なイノベーションネットワークのコンセプトを設計
・募集から退去後まで住民体験全体のカスタマージャーニーを作成
・部門ごとに分断されていた運営計画を住民視点で横断的に整理
・実証実験への参加意欲を高める仕組みや挑戦を支援する施策を提案
・提案内容はクライアント社内の設計方針共有や部門横断の連携を促す基本資料として活用

Reflection

このプロジェクトを通じて、運営目線だけでない、住民起点の体験設計の重要さを再認識しました。また、複数のステークホルダーの事情に配慮し、全体のジャーニーを横断的に整理することで、プロジェクト全体を効率的に進められることが分かりました。一方で、施策実現における運営コストや、長期的な効果の検証には課題が残されています。今後はさらに住民の検証を踏まえた施策検討や改善が必要だと感じました。こうした学びを将来のプロジェクトに活かしていきたいと考えています。