スマートシティの住民体験・PoC体験の設計

入居から退去まで住民体験全体の設計とPoC参加のUXデザイン

UX Design
Time frame: 16 weeks
Client: Major Manufacturer
Role: UX Designer
Skills: Research, Journey Map, Concept Plan, UX Design, Prototype
(都合により概要のみ掲載しています)

Summary

大手メーカーによるスマートシティ開発プロジェクトにて、住民体験全体のデザインに携わりました。住民の入居から街での生活、実証実験(PoC)への参加、そして退去後も継続的に関わる仕組みまで、街全体のエコサイクルを見据えた体験設計を行いました。

目的:入居〜退去までの住民体験の整理とPoC参加促進のUXデザイン
期間:4ヶ月
体制:6名
役職:UXデザイナー
担当業務:リサーチ、体験設計、UX施策企画検討、体験構造の整理、プロダクト機能・画面構成検討、プロトタイプ制作

Challenge

スマートシティの開所に向け、各部署がそれぞれ街の運営計画やPoC計画を進めていました。街では多数のPoCが計画されていた一方、ユーザー視点での体験設計が十分整理されておらず、参加につながりにくい状況がありました。そのため、運営目線だけではなくユーザー目線で、カスタマージャーニーやタッチポイントを整理し、住民に一貫性のある体験を提供することが求められました。ユーザーが街やPoCに自然に参加し、積極的に関与できる仕組みを構築する必要がありました。

Solution

住民の募集から退去後の継続的な関わりまで、一連の住民フローを確認し、全体のユーザー体験を整理しました。各フェーズでの具体的なタッチポイントを定義し、住民がPoCに自然と参加しやすくなる仕組みを検討しました。PoCの参加システム、街に関する情報発信、住民向けミートアップ、退去後のネットワークづくりなど、フェーズごとの施策を提案し、住民が街に馴染み、主体的に関与できる体験を構築しました。

Process

01. プロジェクト理解

スマートシティにおける住民体験に関する情報を整理し、プロジェクトの背景や課題を把握しました。ユーザーのPoC参加を促進するための課題を整理し、どのような体験が提供されるべきかを検討しました。

02. ゴール設定

クライアントとのディスカッションを通じて、住民起点での体験ゴールを設定しました。「Before(入居前)」「During(居住中)」「Graduation(退去)」「Alumni(退去後)」の4つのフェーズに分け、それぞれのフェーズでの住民のニーズと期待を整理しました。

03. スマートシティの枠組み整理とユーザーフローの作成

街運営に携わる関係者のつながりを整理しました。入居住民、PoCの実施企業、街の運営会社など、各ステークホルダーとの関係性を確認しました。
また、住民体験を可視化するため、大まかなユーザーフローを整理し、各フェーズで発生する課題や、住民がどのようにPoCと関わるのかを把握しやすくしました。

04. コンセプト設計

ジャーニーマップをもとに、住民と街との継続的な関係が形成される体験価値を定義しました。住民達が単なる居住者ではなく、街の活動の一員として主体的に関わり続けることを促す仕組みです。

05. PoC参加ジャーニー整理

関係者ヒアリングや既存情報をもとに、住民の参加フローを認知、検討、参加、継続のフェーズで整理し、各段階の行動、課題、改善機会を検討しました。関心の高さに応じて3つのユーザータイプを設定し、タイプ別のPoCジャーニーを作成しました。

06. 課題整理

PoC参加につながりにくい体験構造

ジャーニー整理を通して、ユーザー視点での体験設計が十分整理されておらず、参加につながりにくい状況が分かりました。

1. 認知・検討・申込

情報接点が少なく、よく分からない・面倒そうという心理的ハードルが高い

2. 参加

参加中のタスクや進め方が整理されておらず、迷いや負担が生じやすい

3. 継続

一度参加しても次のPoCにつながりにくく、関係が単発で終わってしまう

参加体験が分断されており、認知から継続まで一貫した体験が提供できていない状態。

07. UX施策の検討

PoC参加を支える体験設計

生活の中で自然にPoCとの接点が生まれ、認知から参加、継続へとつなげるために、各フェーズでの課題を整理し、ユーザーのPoC参加を促す体験設計の施策を検討しました。

1. 認知・検討・申込
心理ハードルを下げ行動を促す
・関心領域に応じたPoC情報のレコメンド
・目的や参加メリット、参加負荷を分かりやすく提示
・説明会や問合せによる不安解消
・オンラインで完結する申込

2. 参加
迷わず次のアクションに進める
・次に行うタスクや必要なアクションを分かりやすく提示
・進捗状況の可視化
・タスク期限の通知・リマインド

3. 継続:
参加を継続できる体験をつくる
・実績・バッジの可視化
・参加履歴に応じた次回PoC提案
・街との継続的な情報接点

これらの施策を継続的に提供するため、各フェーズを一つのサービスでつなぐ参加プラットフォームを検討しました。

08. PoC参加記録システム

継続参加を支える住民向けプロダクトの検討

PoC参加を単発体験で終わらせず、継続的な参加につなげるための住民向けシステムを検討しました。参加状況や次の行動を可視化し、継続利用しやすいUXを意識しています。

1. PoCを知る・申し込む
目的: 参加前の不安を減らし、参加までのハードルを下げる
機能: PoCレコメンド・PoC検索・詳細閲覧・オンライン申込

2. 参加を管理する
目的: 迷わず次のアクションに進める
機能: タスク管理・進捗可視化・通知

3. 継続参加を促す
目的: 単発で終わらず、次の参加につなげる
機能: 実績・バッジ・次回PoC提案・参加履歴

ダッシュボード
参加状況・次に行うタスク・おすすめPoCを集約し、すぐに必要な情報へアクセスできる構成にしました。完了PoCや獲得バッジ数を表示し、参加意欲につながるよう設計しました。

PoC情報
一覧画面では、おすすめPoCや概要を比較しやすく表示し、詳細画面では、目的・参加メリット・参加負荷を分かりやすく提示し、安心して参加を検討・申込できる情報設計を意識しました。

まとめ

プロジェクト初期にクライアントへのヒアリングを実施し、街の構想や住民に求める行動を整理。住民体験をフェーズ別にジャーニーに書き出し、PoC参加を支える体験設計や参加システムの検討を行いました。住民が退去後も街と関わり続ける仕組みや、住民・開発者・運営者の三者が共創できる体験施策が特徴です。住民視点に基づいた一貫した体験設計が、クライアントの、プロジェクト内外での方針共有や部門間連携の促進にも貢献しました。

Key Outcomes

・街を起点とした持続的なイノベーションネットワークのコンセプトを設計
・募集から退去後まで住民体験全体のカスタマージャーニーを作成
・部門ごとに分断されていた運営計画を住民視点で横断的に整理
・PoCへの参加意欲を高める仕組みや挑戦を支援するUX施策を提案
・提案内容はクライアント社内の設計方針共有や部門横断の連携を促す基本資料として活用

Reflection

このプロジェクトを通じて、運営目線だけでない、住民起点の体験設計の重要さを再認識しました。また、複数のステークホルダーの事情に配慮し、全体のジャーニーを横断的に整理することで、プロジェクト全体を効率的に進められることが分かりました。一方で、施策実現における運営コストや、長期的な効果の検証には課題が残されています。今後はさらに住民の検証を踏まえた施策検討や改善が必要だと感じました。こうした学びを将来のプロジェクトに活かしていきたいと考えています。